安宿を探すと、大抵くそぼろいビジネスホテルか、空き部屋だけは避けたいという意図の当日直前値下げ宿か、じゃらんや楽天トラベルには当然のように非対応のノンインターネット宿に行き着くパターンが多いです。そして皆得てして電話をめんどくさがるので、ノンインターネット宿はスンナリ予約できたりしてぼくのようにカッチリ予定を決めない貧乏旅行者的には助かったりするのです。
九州に行くようなことをツイートしたら、そんなノンインターネット宿をたまたま教えてくださった方がいて、本気で泊まるところまで考えた(旅程の都合で残念ながらスルーしました)のが、大分は別府北部旅館街にある、旅館かおりです。
旅館かおりがあるこの辺はかつては行合町(ゆきあいちょう)と呼ばれた遊郭街だったそうです。
旅館街を少し進むと見えてきます。ものすごい佇まいです。(別角度から)
旅館かおりもかつては「貸席香織」という名の遊廓で、1958年に旅館に転業したものの、建物自体は1933年に建ってからほぼそのままとのことです。
この日はたまたまアートイベントの会場のひとつとして利用されていることもあり、自由に見学できる状態だったので遠慮無く見学させてもらうことにしました。
ケーブルテレビ完備とは割と現代的です。山谷や西成あたりのドヤならカラーテレビ完備と書いてあるはずです。一泊2000円もなかなかリーズナブルではありますが、割と宿の選択肢が文字通りピンキリ幅広いのが別府の良さでもあります。
中に入り、帳場のようなところでテレビがついていたのですが、おそらく主人のじいさんは寝っ転がっていたのでそのまま「中見せていただきます」と声を張りました。「あいよーどうぞー」と姿は見えども聞こえたので、上がり込ませていただきます。
まずは風呂場です。
ドアが3つもある空間は共同浴場的な使い方なのでしょうか。おそらく銀のシートの下にお湯があるのでしょう。もう一つのいわゆる風呂っぽい風呂場もかなり凄いです。当然源泉掛け流しのようで、湯が常に湯船からオーバーフローしているのがわかります。
二階に上がります。
独特の雰囲気があります。不気味というと褒め言葉に聞こえるかわかりませんが、不気味です。褒めてます。
部屋も、四畳半くらいの広さです。激シブすぎてダメな人は流石にダメなんではないでしょうか。ぼくは多分イケます。なおこの布団やカーテンはそのアートイベントでの作品で備品ではありません(が、それコミで泊まれたらしいです)。
やはり、外側が凄い建物は中も凄い、という当たり前そうでなかなか見る機会がなかったりするものを見れて感動しました。どうしても先に進まなくてはいけなかったので泊まるのは断念しましたが、若者によるアートイベントなどで盛り上がっていけばいいなと感じました。
最期に主人にお礼を言って立ち去りました。コタツに寝っ転がったまま返事をしてくれました。どうかお元気で。
【データ】
住所:大分県別府市駅前本町10-33
予約可否は要電話確認。(0977-22-2847)
取材時期:2012年11月