青森に有名な元遊郭の現役お宿があります。なんと明治の建物がそのまま!ということで、どうしても行ってみたいと前々から思っていて、ついに訪問することができました。
その名は、新むつ旅館です。
こちらは古いだけでなく、元遊郭の転業旅館であることもまた有名です。その辺の歴史はホームページに概要がありますので是非。
訪れるにあたって、当然宿泊をしたかったのですがどうしても日程の都合で帰らねばならず、ホームページにあるとおりランチのみで見学できないかと思い当日に電話をかけたところ、「本来は一人は受付していないが、偶然2名様の予約があるのでついでにOK」と有り難いお答え。ランチだけでも前もって、かつ2名以上の訪問で予約しましょう。
さて訪問には、JRの八戸線、小中野駅が最寄りになり、そこから歩いて15分ほどになります。
地図を見ると「わかる人にはわかる」位置に新むつ旅館は存在します。かつては小中野新地と呼ばれる花街であったそうです。
まず外観を愛でます。いちいち細かい造形にも感心しきりです。
中に入り、声をかけると女将が出迎えてくれました。しかし玄関からもまたすごい。
玄関の波打った天井も劣化じゃなくちゃんとそう造ったのでしょう。手間暇がかかっていて現代のコスト第一主義建築とは一線を画します。
女将に座敷に通され、料理を供されるまで館内を見学します。まーもう無言でベタベタ貼っていきますがとにかくいちいち凄い。
釘隠しの装飾は殆どがレプリカで、オリジナルは盗まれたとのことです。そのほかキセルなども盗まれたと言いますが…。
貸座敷遊客名簿、いわゆる顧客名簿兼お上への報告用の売上台帳です。こんなのを無造作に置いていていいのでしょうか…。中身の情報としては、顧客名とその特徴(背丈、顔など見た目)、オキニの子、売上金額など割とセンシティブな(笑)情報が書いてありました。
館内も味わい深い、みたいな簡単なレベルで表現できないほどのオーラを放っています。これはほんとに体験しないとわからないと思いますが、以下の写真でエッセンスだけでも伝われば幸いです。
二階の廊下が空中回廊のようになっているんですね。吹き抜けもあり、また装飾などの豪華さで実際の狭さよりも不思議と開放感があるというか、すごく高級な感じも出ています。
そんなこんなでランチ登場です。
基本的に地のものと郷土料理ベースで作ってもらえるのが嬉しいです。
今の女将は東京から嫁いできたとのことですが、味は八戸のものと地元の方からも認められたとのこと。
この女将、テンションが高くていろいろとよく教えてくれます(笑)。元遊郭の宿に嫁いできたときのことや、伝聞ですが昔聞いた話など、このへんの歴史についても是非お話を聞きましょう。
これは補修したときに出てきたという、材料一覧と当時の相場表です。
こちらはここで働いていたという女性の写真。
こうやってちょっと昔のことを生のお話で聞くというのも貴重なものです。見た目だけなぞってハイ終わり、ではなくもう少し勉強しなければな、と思い知らされました。次は是非泊まりで来ます!とお礼を言って立ち去りました。余談ですが、トイレはウォシュレットに改装してあったので快適に泊まれると思います!
【おまけ】
ところで個人的な後日談ですが、よくモノを盗まれる新むつ旅館、女将が愛読していた本も盗まれた、ということで、Amazonで探してこれですかね?とiPhoneで見せてあげました。「これだったと思うわ〜」と言うので、実際買ってみました。それがこの『廓』という小説です。 ※現在は絶版の様子。
このことを、数週間後に訪れた遊郭部さんが女将に伝えたようで、女将から電話がかかってきました(笑)。で、なんやかんやで本をもう1冊購入し、送って差し上げることになりました。
そのお礼として、八戸グルメが我が家に届きました。
特に自家製塩からは最高でした。
女将と遊郭部さんにはこの場を借りて御礼申し上げます。
【データ】
住所:青森県八戸市小中野6-20-18
ランチのみは要予約、最低2名以上からとのことです。
ホームページはこちら。
宿泊予約は楽天トラベルでもできるようです。
取材時期:2013年10月