ぼくの父は北海道芦別市出身なので、B級スポット界に名を轟かせていた「北の京芦別」は幼少の頃祖父の家に長期泊まった際に何度か行った記憶があります。
記憶の中の「北の京芦別」はそれはもう華やかな場所でした。なんかビカビカしてデカくて、豪華な風呂とゲームセンターがある場所、そんなイメージでした。
そのうちいつしか、いわゆるB級スポット紹介雑誌やサイトなどで見かけるようになり、「ん、ここはもしやあそこなのか??」と現実を突きつけられることになりました。思い出は綺麗なままが良いこともあります。
ちなみに近くのカナディアンワールドも、今は公園ですが当時はテーマパークとして本当に赤毛のアン的な外国人がいました。
さて、その祖父が亡くなり、葬儀のため芦別を訪れることになりました。2008年に一度一人で訪れていたのですがそれが生きている祖父に会った最期になりました。
親戚が集っていたのですが、借りている公民館的なところにザコ寝でいいか的な感じになったものの、それは嫌なので弟たちを誘ってホテルを取ることにしました。芦別のホテルといえば、ふつうはスターライトホテルを選択します。しかしここはせっかくなので、と思い、北の京芦別に宿泊することにしました。祖父が死んでるというのにネタ収集にはしるというのも我ながらどうかとは思ったのですが、泊まる施設がたまたま結果的にネタであったというだけです。
※チェックインはかなり遅い時間だったので朝撮った写真と混在します。
鎧武者のすぐ隣あたりの部屋を案内されました。ふつうの和室です。風呂やトイレは共同になります。
翌日帰る弟のために飛行機をiPhoneから予約した後、少し館内を見回ってみます。
館内は自分たち兄弟3人と、従業員はフロントとあと一人くらいの気配を感じるくらいです。ちょっと怖くなるくらい誰もいません。
お祭り広場は漆黒の闇に包まれていました。ゲームセンターのほうに繋がる通路もシャッターが閉まっていて確認できず。カフェバーも明かりはつけど店員が見えなかったので遠慮しました。
取り敢えず風呂に入ります。この日は?日本庭園大浴場でした。幼少の頃はギリシャ風呂に入ったことがある記憶があります。
日本庭園なのに若干リゾート風味や神殿風味もあって、こういうところがB級らしくて憎めません。なお何種類も風呂があるはずですが経費削減のためにいくつかの湯船には水が貼っていませんでした。
兄弟で露天風呂に入り久々に話をしていたら、従業員から「もう閉めたい」と言われてあがることにしました。
ちなみにおそらく温泉ではないただのお湯でした。温泉なら芦別温泉のほうがいいです…。
さてこの日は葬式という慣れない諸々の対応があり疲れてすぐ寝ました。
翌朝、弟たちより早く起き、館内の見学をしました。
北の京のホテルは二部構成というか、ぼくたちの泊まったのはホテル三十三間堂、そしてホテル五重塔という施設もあります。こちらは殆ど手入れがされておらず、相当期間使っていなそうな印象を受けました。庭もちょっと荒れ始めている感じでした。
五重塔の屋上には展望台があり、北の京が一望できます。崩壊してる施設もありますね……。
ちなみに、これがホテル五重塔の客室のひとつです。三十三間堂もだいたいこんなレベルでした。まあふつうに泊まれるレベルなのでご安心ください。
当たり前ですが、本来の目的であるところの葬儀があるので大観音とかそっちまで見る時間は今回は取れませんでした。
朝食はぼくら兄弟3人と、あと2人くらい工事関係者、それと従業員のためだけの割にはちゃんと品数が揃っています。作り置きできそうなものばかりでしたが急な宿泊の割にはちゃんとしていました。
チェックアウトしてタクシー待ちをしている間にロビーを物色しました。
こういうのも、寂れた施設だと一層の痛々しさを感じます。一応弟に「着る?」と聞きましたが勿論拒否されました。
お土産コーナーも80年代から20年売れ残っている品物ばかりです。アダ名ハンコにアダ名キーホルダー。ぼくも持っていた気がします。
これが唯一90年代のお土産です。勝手にお気に入りにされた上に「だよ〜ん」と制作者のノリだけ80年代の品物にはアムロちゃん、スピード各位も迷惑でしょう。
こんな感じで、なんというか普通に見るとただのアレなスポットですが、個人的には幼少の思い出とのギャップがノスタルジーな気分をくすぐる物件でした。
そして、引き継いで運営されるというライフステージホテル天都としての"ほどよい"(ここ大事)再生を期待します。
取材時期:2011年10月
【追記】2013年8月末をもって閉鎖されたそうです。まぁ、そうか…